会議・提案のスライド作成に生成AIを使う ── 構成案と話す原稿まで、図と数字は人が入れる

金曜の夕方に「月曜の部門会議用に、進捗のスライドを10枚ほど」と言われる。来週は取引先への提案で、20枚の資料を持っていく。スライドづくりに時間を取られている人は多く、しかもその時間の大半は、何を言うかを考える時間ではありません。どの順番で並べるか、1枚に何を載せるか、載せた箇条書きをどう読み上げるか、という形式の作業に消えています。

営業の提案書の中身をどう作るかは営業の提案書づくりに生成AIを使うに、経営企画の報告書と会議資料で数字をどう扱うかは経営企画の報告書と会議資料に生成AIを使うに書きました。この記事はどちらとも違い、「スライドという形式」に絞ります。何枚にするか、1枚にどれだけ載せるか、話す原稿をどう出すか。部署を問わず、スライドを作る人が同じように使える手順です。

先に結論を書くと、構成案、各枚の見出しと箇条書き、話す原稿の3つは生成AIに出させて、図と数字は人が入れます。登場する会議や枚数は架空の想定例で、実際の顧客事例ではありません。

「スライドにして」と頼むと、文書が切り分けられて出てくる

生成AIに会議の要点を貼って「スライドにして」と頼むと、だいたい次のようなものが返ってきます。1枚目に「背景」、2枚目に「現状」、3枚目に「課題」、4枚目に「対策」。各枚に箇条書きが5〜7個。1つの箇条書きが2行。

これは、文書の章立てをそのまま枚に切ったものです。読めば分かるけれど、話す側はどの枚で何を言えばいいか分からず、聞く側はスライドを読むのに忙しくて話を聞いていない。スライドづくりの失敗の多くは、この「文書をスライドの形にしただけ」の状態から来ています。

スライドが文書と違うのは、1枚ごとに時間が区切られている点です。1枚を映している1〜2分のあいだに、聞き手に受け取ってほしいことは1つ。これを「1枚1メッセージ」と呼びます。AIに出させるときも、この条件を先に渡さないと、文書の切り分けが返ってきます。

3段階に分けて出させる

一度に「スライドを作って」と頼まず、構成案、各枚の見出しと箇条書き、話す原稿の順に、3回に分けて出させます。前の段階を人が直してから次へ進むので、構成の段階で枚数や順番を直せば、あとの段階は直した構成に沿って出てきます。

段階AIに渡すものAIに出させるもの人が確かめること
1 構成案持ち時間、相手、決めてほしいこと、手元の材料枚数と、各枚で伝えたい1文順番と枚数。決めてほしいことが前半にあるか
2 見出しと箇条書き確定した構成案各枚の見出し1文と、箇条書き3つまで。図が入る枚には「何の図か」の指示見出しが1文になっているか。根拠のない数字が混ざっていないか
3 話す原稿確定した各枚の内容と、1枚あたりの時間各枚の原稿数字と固有名詞。スライドの読み上げになっていないか

段階1:構成案は「各枚で伝えたい1文」だけ出させる

最初に渡すのは、持ち時間、誰に見せるか、その場で決めてほしいこと、手元にある材料(前回の議事録、数字の表、商談メモなど)です。出させるのは、枚数と、各枚で伝えたい1文だけ。見出しも箇条書きも、まだ出させません。

枚数の目安は、持ち時間を1枚1〜2分で割った数です。15分の報告なら8〜12枚、30分の提案なら15〜20枚。AIは放っておくと枚数を増やす方向に動くので、「15分で10枚まで」と上限を書いておきます。

構成案が返ってきたら、順番と枚数を人が直します。見るのは「決めてほしいことが前半にあるか」です。背景の説明が4枚続いて、決めてほしいことが9枚目に出てくる構成は、AIが最初に出しやすい形です。社内会議なら、決めてほしいことを2枚目に持ってくるだけで、残りの時間の使い方が変わります。

段階2:見出しは1文、箇条書きは3つまで

確定した構成案を渡し、各枚の見出しと箇条書きを出させます。条件は2つ。見出しは、その枚で伝えたい1文をそのまま置くこと。「現状の課題」のような体言止めではなく、「問い合わせの返信に平均2営業日かかっている」のように、読めば言いたいことが分かる文にします。箇条書きは3つまで、1つは1行で収まる長さにします。

この段階でAIが入れてくる数字には注意が要ります。あとの節で書きます。図が入る枚については、図そのものではなく「何と何を比べる、どの種類の図か」という指示だけを出させます。

段階3:話す原稿は、スライドに書いていないことを話す

各枚の見出しと箇条書きが確定したら、話す原稿を出させます。1枚あたりの時間を渡すと、分量がそろいます。話す速さは人によりますが、1分で300字前後が1つの目安です。

原稿の条件は「スライドに書いてあることを読み上げない」です。箇条書きに「返信に平均2営業日」と書いてあるなら、原稿では、なぜ2営業日かかるのか、どの工程で止まっているのかを話す。スライドと原稿が同じ内容なら、どちらかは要りません。AIはこの条件を渡さないと、箇条書きを丁寧な文に直しただけの原稿を出してきます。

出てきた原稿は、話す本人が声に出して直します。言いにくい言い回し、自分なら使わない言葉は、その場で置き換えます。

スライド1枚の型(見出しは1文、箇条書きは3つまで、図と数字の場所は人が入れる)と、構成案・見出しと箇条書き・話す原稿の順にAIへ出させる3段階を並べた図
AIに出させるのは構成案、見出しと箇条書き、話す原稿の3段階。図と数字の場所は空けておき、出典のあるものを人が置きます。

図と数字は人が入れる

3段階のどこでも、AIに図と数字を作らせません。理由は2つあります。

1つ目は、数字が作られることです。段階2で「売上の推移を示す枚」の箇条書きを出させると、「前年比112%」「月平均で15%削減」のような数字が入ってくることがあります。渡した材料にその数字がなければ、それは文章の形を整えるために置かれた数字で、出典はありません。文として自然なので、見出しと箇条書きを眺めているだけでは気づきにくい。数字と固有名詞を先に見る確認の順番はAIの出力をどう確認するかに書いたとおりで、スライドでも同じです。

2つ目は、図に出典がないことです。「市場規模の推移のグラフを入れましょう」という提案はAIから出てきますが、そのグラフを描くための数字は、公開されている統計か、自社の表計算ソフトから持ってくるものです。AIに「それらしいグラフを描いて」と頼めば描けますが、軸の数字に根拠がない。画像生成でそれらしい図を作るのも同じで、社外に出す資料では避ける線です。画像生成の社内ルールは画像生成AIを業務で使う前に決めることに書きました。

では、図と数字の枚でAIに何を頼むか。「この枚に何の図が入るべきか」の指示書です。たとえば「横軸を月、縦軸を問い合わせ件数にした折れ線で、対策前と対策後の2本を比べる」。これがあれば、表計算ソフトで数字から図を作る人は迷いません。数字そのものは、表計算ソフトの集計か、出典を書ける資料から人が持ってきて置きます。

社内会議向けと社外提案向けで変えるところ

同じ手順でも、社内会議と社外提案では、段階1で渡す条件が変わります。

項目社内会議社外提案
1枚目の次に置くものその場で決めてほしいこと相手の課題を、相手の言葉で書いた枚
背景の説明省く。出席者は知っている必要。ただし相手の状況の話で、自社の紹介ではない
枚数少なめ。15分で10枚以内持ち時間しだい。質疑の時間を引いて数える
話す原稿要点だけ。箇条書きでよい文章で用意する。冒頭と、金額や条件を話す枚は特に
渡してよい情報社内ルールの範囲相手先名・見積金額・取引条件は入れない

社内会議でいちばん効くのは、背景を省くことです。出席者が知っていることを4枚かけて説明する時間が、決める時間に変わります。AIは「背景から始める」構成を出しやすいので、段階1の指示に「出席者は背景を知っている。背景の枚は不要」と書きます。

社外提案で気をつけるのは、渡す情報です。相手先の会社名、担当者名、見積金額、取引条件は、会社として契約したサービスで入力してよい範囲を確かめていない限り、入れません。「A社」「金額は別途」と置き換えても、構成案と見出しは出せます。金額の枚は見出しだけ出させて、数字は提出の直前に人が入れます。

話す原稿まで出すと、スライドが薄くなる

3段階目の原稿まで出す理由は、原稿の出来よりも、スライドの側にあります。

原稿がないと、話す人は不安になって、言いたいことを全部スライドに書きます。箇条書きが7つになり、文字が小さくなる。原稿があれば、スライドには見出しと3つの箇条書きと図だけを置いて、残りは話せばいい。「スライドが薄い」のは、原稿があるときには欠点になりません。

配布資料も兼ねるなら、話す原稿をスライドのノート欄に入れておきます。読む人は見出しと原稿で話の筋を追え、スライドそのものは映したときに読める情報量のまま残ります。「映す資料」と「読む資料」を1つのファイルで済ませようとして両方が中途半端になるのは、よくある形です。

よくある質問

スライドを自動で作るツールを使えば、この手順は要りませんか?

文章を貼るとスライドの体裁まで一度に出してくれるツールはありますが、出てくるのは多くの場合「文書を枚に切り分けたもの」で、1枚1メッセージにはなっていません。体裁が整っているぶん、構成の粗さに気づきにくいのが難しいところです。構成案を先に文字で出させて人が直し、確定してからツールに流し込む順にすると、ツールの良さが活きます。図と数字を人が入れる点は、どのツールでも変わりません。

話す原稿までAIに書かせると、棒読みになりませんか?

AIの原稿をそのまま読めば、そうなります。原稿は話す本人が声に出して直す前提で、言いにくい言い回しや自分なら使わない言葉を置き換えます。直す手間はかかりますが、白紙から書くより短く済むケースが多いです。原稿の役目は、本番で読み上げることより、スライドに全部書かなくて済むようにすることです。要点だけ残して、本番では見ずに話す人もいます。

図やグラフも生成AIに描かせてはいけないのですか?

数字を渡していない図は、描かせない前提です。AIが描いたグラフの軸の数字には根拠がなく、社内会議でも社外提案でも説明できません。AIに頼むのは「横軸と縦軸は何か、何と何を比べるか」という図の指示書までで、図そのものは表計算ソフトの集計から人が作ります。手順を示す概念図のように数字を含まない図は作らせても差し支えありませんが、社外に出すものは出典と見た目の線を社内で決めておきます。

構成と原稿はAI、図と数字は人

スライドづくりで生成AIに任せるのは、構成案、各枚の見出しと箇条書き、話す原稿の3つです。一度に頼まず、段階ごとに人が直してから次へ進む。1枚1メッセージ、見出しは1文、箇条書きは3つまで。図と数字は、指示書までをAIに出させて、出典のあるものを人が置きます。社内会議では背景を省き、社外提案では相手先の情報を渡さない。この線を決めておくと、金曜の夕方に頼まれた10枚の作り方が変わります。

自部署の会議資料に当てはめて考えたい段階でも、お気軽にご相談ください。