画像生成AIを業務で使う前に決めること ── 社内資料・SNS・販促物で線を引く
「フリー素材を探すより早いので、AIで作っちゃいました」。社内勉強会の資料に、見慣れないイラストが入っている。翌週には、営業がSNSに載せる画像を同じ方法で作り、その次はチラシの表紙が候補に上がる。誰も止めていませんし、誰かが許可したわけでもありません。
画像生成AIは、文章の生成AIより先に、こうして社内に入ってくることがあります。見た目の成果がすぐ分かり、作った本人も周りも喜ぶからです。そして使い道が、社内資料から社外に出る媒体へ、気づかないうちに広がります。
画像生成AIを業務で使う前に、社内で決めておくことを5つに分けて書きます。用途ごとの可否、実在の人物や他社の作品に似せないこと、生成物であることの扱い、利用規約の確認、最終確認者です。著作権などの法的な判断はこの記事では示しません。用途の線引きの例は架空の想定例です。
文章と違って、画像は確認する場所が見えにくい
文章の下書きなら、数字や固有名詞を拾って確かめるという手順が作れます。画像はそうはいきません。何が問題になり得るのかが、ぱっと見では分からないからです。
生成された画像には、意図しないものが紛れ込みます。読めそうで読めない文字、どこかで見たようなロゴの断片、指の数が合わない手。もっと厄介なのは、既存のキャラクターや作品、実在の人物に似てしまうことです。作った本人に悪気がなくても、見た人がそう受け取れば、会社の名前で説明することになります。
しかも、チラシは印刷して配った時点で回収できません。SNSの画像も、保存されれば残ります。だから画像は、作る手順より、使ってよい場面と確認する人を先に決める話になります。
用途ごとに、使ってよい範囲を決める
最初に決めるのは、用途ごとの可否です。全部禁止にすると、隠れて使う人が出ます。全部許可にすると、社外に出るものまで確認なしで流れます。用途で分けるのが現実的です。
| 用途 | 例 | 線引きの例(架空の想定例) |
|---|---|---|
| 社内資料の挿絵 | 勉強会のスライド、社内報、手順書のイメージ図 | 使ってよい。社外に転用しない |
| SNS投稿 | 季節のあいさつ、イベント告知の背景 | 使ってよい。商品・店舗・人物の実物に見えるものは使わない。広報が確認する |
| チラシ・販促物・Webサイト | 新商品のチラシ、展示会のパネル | 利用規約を確認済みのサービスで作ったものに限る。広報と部署の責任者が確認する |
| ロゴ・商品パッケージ | 会社や商品のロゴ、パッケージの図柄 | 当面は使わない |
ロゴやパッケージを対象外にしているのは、長く使い続けるもので、権利の扱いを後から変えにくいからです。社内資料から始めて、確認の手順が回るようになってから範囲を広げる順番なら、無理がありません。
実在の人物、他社の商標や作品に似せない
指示文に、作家名、作品名、キャラクター名、ブランド名、有名人の名前を入れない。これを社内ルールに1行で書いておきます。「〇〇風のイラストで」という頼み方は便利ですが、似せること自体を目的にした指示です。
名前を入れなくても、似てしまうことはあります。人気のあるキャラクターに近い絵柄、有名な広告に近い構図、他社のロゴに近い形。社外に出す画像は、作った人とは別の人が見て「どこかで見たことがないか」を確かめます。画像検索で似たものがないかを調べる手順を足しておくのもひとつの方法です。
社員や顧客の顔写真を入力して加工する使い方も、ここで決めておきます。本人の同意がない写真は入力しない。同意があっても、退職後や契約終了後の扱いを決めてから使う。顔写真は個人情報なので、入力してよい情報の線引きは第3条と第8条だけ先に決めるの考え方で、文章と同じ枠に入れて扱うと迷いません。
生成物であることを、どう扱うか
次に決めるのは、画像生成AIで作ったものだと示すかどうかです。ここは用途で分けて考えます。
社内資料の挿絵なら、表示はなくても困らないことが多いでしょう。社外に出るものは、少なくとも「実物と誤解される使い方をしない」ことを先に決めます。商品の写真、店舗の外観、施工の事例、お客様の姿を生成画像で作り、実物のように見せるのは、事実と違う表示になります。この点は広報・マーケティングで生成AIを使うでも、最初から書かせない使い方として挙げました。
イメージとして使う画像に「画像はイメージです」「AIで生成した画像です」と添えるかどうかは、会社として決めておきます。担当者ごとに判断が分かれると、同じ会社の投稿で表示があったりなかったりします。投稿先のSNSやサービスが、生成した画像についての独自の表示ルールを設けていることもあるので、媒体ごとの決まりも確認しておきます。
利用規約と商用利用を、誰が確かめるか
画像生成のサービスは、利用規約で使い方の範囲を決めています。商用利用を認めているか、生成した画像の権利をどう扱うか、禁止している用途は何か。無料のプランと有料のプランで条件が違うサービスもありますし、規約は改定されます。
社内で決めるのは、規約を読む人と、読んだ日付を残すことです。「このサービスの規約は総務が◯月◯日に確認し、販促物への利用を認めている」。この1行があれば、半年後に誰かが規約の改定に気づいたとき、どこから確認し直せばよいかが分かります。アカウントを個人のものにするか会社の契約にするかも、ここで一緒に決めます。考え方は研修の前に決めるアカウントの話に書きました。
生成した画像の著作権がどう扱われるかは、国や事案によって議論が続いている分野です。この記事では、使ってよいかどうかの法的な判断は示しません。まず利用するサービスの規約を確認し、販促物や長く使う画像については、必要に応じて弁護士など専門家にご確認ください。
最終確認者を、用途ごとに名前で決める
最後に、誰が「出してよい」と決めるかです。作った本人が確認者を兼ねると、確認の工程がないのと同じになります。
架空の想定例ですが、社内資料なら作成者の上長、SNS投稿なら広報担当、チラシや販促物なら広報担当と、その商品を扱う部署の責任者、という分け方が考えられます。確認者が見るのは、紛れ込んだ文字やロゴ、人物の顔と手の崩れ、既存の作品や人物との類似、生成物であることの表示、使ったサービスの規約の5つです。迷ったときの相談先も、確認者とは別に1か所決めておきます。
文章の出力を確認する順番はAIの出力をどう確認するかで扱っています。画像の確認も、全体の印象より先に、決めた項目を1つずつ見るという点は同じです。
よくある質問
画像生成AIで作った画像の著作権は、自社のものになりますか?
この記事では判断を示しません。生成した画像の権利をどう扱うかは、利用するサービスの規約で定められていることが多く、法的な扱いは国や事案によって議論が続いています。まず規約で、商用利用の可否と生成物の権利の扱いを確認してください。販促物やロゴのように長く使うものは、必要に応じて弁護士など専門家にご確認ください。
無料の画像生成サービスで作った画像を、チラシに使ってもよいですか?
利用規約次第です。無料のプランと有料のプランで、商用利用の条件が違うサービスがあります。チラシに使う前に、規約で商用利用が認められているかを確かめ、誰がいつ確認したかを記録してください。そのうえで、実在の人物や他社の作品に似ていないか、実物と誤解される使い方になっていないかを、作った人とは別の人が確認します。
社員の顔写真をAIで加工して、採用ページに使ってもよいですか?
本人の同意を得たうえで、使う用途と期間を決めてからにしてください。顔写真は個人情報なので、入力してよいサービスかどうかも社内ルールで確認します。採用ページのように社外に出る用途では、加工した画像が本人の実際の姿と大きく違うと、事実と違う表示と受け取られることがあります。退職後に画像をどう扱うかも、あわせて決めておくと安心です。
線を引いてから、使う範囲を広げる
画像生成AIは、社内資料から始まって、気づかないうちに社外の媒体へ広がります。だから使い始める前に、用途ごとの可否、似せないこと、生成物の表示、規約の確認、最終確認者の5つを決めておきます。社内資料で確認の手順が回るようになってから、SNS、販促物と範囲を広げる。その順番なら、便利さを手放さずに済みます。
社内の線引きをどこから決めるかで迷う段階でも、ご相談いただけます。
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