営業の提案書づくりに生成AIを使う ── 商談メモから初稿を出す4ステップと、営業10業務の想定例

提案書の初稿を、若手が夜に持ち帰りで作る。翌朝、上長の手直しで骨子から作り直しになる。提出までに数日かかり、その間に商談の熱が冷める。営業部門の相談で、いちばん多く聞く話です。

この課題に生成AIを当てるなら、最初にやるべきは「提案書を書かせる」ことではなく「商談メモの型を決める」ことです。その理由と手順を先に書き、後半で営業の定型業務10件を、いまの進め方と研修後の進め方を並べて整理します。

記載している業務内容と所要時間はすべて想定例で、実際の顧客事例や実測値ではありません。

提案書の速さは、商談メモで決まっている

生成AIに「提案書を書いて」と頼んでも、使える初稿は出てきません。AIが知らないのは提案書の書き方ではなく、その商談で何が話されたかだからです。

提案書づくりを速くする鍵は、AIに渡す入力、つまり商談メモにあります。課題・条件・期限・次の一手という共通の型で商談メモを残せば、AIはそのメモから提案骨子の初稿を数分で組み立てられます。型のないメモ(手帳とチャットに散らばった断片)からは、型のない初稿しか出てきません。

提案書の初稿を出すまでの4ステップ

ステップ1:商談メモの型を全社で揃える

まず、商談メモの項目を決めます。最小構成は次の4つです。

項目記録すること
課題顧客が困っていること。顧客の言葉のまま残す
条件予算感、決裁者、比較検討中の他社、導入時期の制約
期限顧客側の期限と、こちらの提出期限
次の一手次回までに双方が行うこと

録音の文字起こしや箇条書きのメモを、この型に流し込む工程はAIに任せられます。顧客名・金額・期限の確認だけを人が行います。

ステップ2:メモから提案骨子の初稿を生成する

型どおりの商談メモを入力にして、提案骨子(背景・課題・提案内容・期待する効果・進め方・費用の考え方)の初稿をAIに作らせます。ここで大切なのは、社内の提案書テンプレートの構成を先にAIに渡すことです。構成を渡さないと、毎回違う形の初稿になります。

ステップ3:顧客固有の条件を人が確認する

初稿に対して、人が確認するのは次の点です。

  • 顧客の課題の言い換えが、顧客の言葉から離れていないか
  • 条件(予算・時期・決裁)が正しく反映されているか
  • 事実と異なる断定(「必ず」「確実に」)が紛れ込んでいないか
  • 自社の提供範囲を超える約束が書かれていないか

ステップ4:当日中に送付し、商談メモに追記する

確認が済んだら当日中に送付します。送付後、顧客からの反応と質問を商談メモの「次の一手」に追記しておくと、次の提案の入力にそのまま使えます。

営業で生成AIを使える業務10選(想定例)

提案書以外にも、営業の定型業務には文書の工程が多くあります。当社が配布している「職種別AI活用業務カタログ」の営業編を要約します。難易度は★1=基礎的な文書業務、★2=基準づくりを伴う業務の目安です。

業務難易度BEFORE(いま)AFTER(研修後)所要時間の変化
01 商談メモの型づくり担当者ごとにバラバラで、後から論点が分からない共通の型で残し、AIが録音や箇条書きから型に流し込む30分 → 10分
02 提案骨子の初稿作成★★若手が持ち帰りで作り、骨子から作り直しになる型どおりの商談メモからAIが初稿を生成、人が固有条件を確認2日 → 当日中
03 訪問報告・社内共有帰社後にまとめて書き、粒度が人によって違うAIが商談メモから報告文に変換、人が次アクションと期限を追記1件20分 → 5分
04 見積前のヒアリング項目整理★★聞き漏らしがあり再確認の連絡が発生する過去の再確認事項からAIが商材別のヒアリング項目表を作る再確認 週3件 → 1件
05 商談後のお礼・フォロー文翌日になり、定型文で商談内容に触れていないAIが商談メモから要点入りの文面を作り、人が次回日程と宿題を明記15分 → 5分
06 競合比較の整理メモ★★担当者の記憶と経験で説明している比較の観点と出典を先に決め、AIが観点別の比較表草案を作る作成3時間 → 1時間
07 失注理由の分類と共有★★「価格」で一括りにされ、改善につながらない分類の軸を合意し、AIが自由記述を分類して傾向をまとめる集計4時間 → 1時間
08 週次パイプライン報告★★案件ごとの状況を毎週書き直す報告項目を決め、AIが商談メモの差分から状況コメントを作る半日 → 1時間
09 提案時の想定質問リスト想定質問を準備せず、持ち帰りになるAIが提案内容から想定質問を洗い出し、社内で回答を統一準備60分 → 20分
10 既存顧客への案内文全顧客に同じ文面を一斉送信する顧客を利用状況で分け、AIがグループ別の案内文を作る1通30分 → 8分

所要時間の変化は、業務内容・対象データ・担当者の習熟度によって変わります。効果を保証するものではありません。

営業で特に注意したい3つの線引き

営業は社外に出る文書を扱う職種です。次の3点は、社内ルールとして先に決めておくことをおすすめします。

  1. 顧客情報の入力範囲:顧客名・担当者名・契約条件をそのまま入力してよいかは、会社が契約したサービスの設定(入力データが学習に使われないか)を確認したうえで決めます。判断に迷う場合は、固有名詞を伏せた形で入力します
  2. 社外に出す文書の確認者:提案書・見積書のように契約に関わる文書は、作成者以外の確認を経てから送付します
  3. 断定表現の扱い:AIの初稿には「必ず」「業界最高」のような断定が紛れ込むことがあります。根拠のない断定は送付前に人が直します

研修テーマに選ぶなら、どこから始めるか

営業部門の場合、最初のテーマは「01 商談メモの型づくり」と「02 提案骨子の初稿作成」をセットにすることをおすすめします。商談メモの型が整うと、03の訪問報告、05のフォロー文、08の週次報告も同じメモを入力にできるため、1つの型で複数の業務が変わります。

当社の研修では、受講者が自社の商談を匿名化したサンプルで商談メモの型と提案骨子のテンプレートを作る演習を行います。実際の商談への適用は、研修後に受講者自身が行います。

よくある質問

生成AIに提案書を書かせると、どの会社にも同じような内容になりませんか?

提案書の中身を決めるのは、AIではなく入力する商談メモです。顧客の課題を顧客の言葉のまま残した商談メモを入力にすれば、初稿はその顧客固有のものになります。逆に、商談メモが薄いと汎用的な初稿しか出てきません。

顧客名や契約条件を生成AIに入力しても大丈夫ですか?

会社が契約したサービスで、入力データが学習に使われない設定を確認したうえで、社内ルールとして入力してよい範囲を決めることをおすすめします。判断に迷う場合は、固有名詞や金額を伏せた形で入力し、確定後に人が補う方法があります。

営業担当者はパソコンが得意ではないのですが、研修についていけますか?

当社の研修は、プロンプトの技術ではなく「自分の業務のどこにAIを使うか」を出発点にしています。商談メモの型を決め、それを入力にして初稿を出す、という手順は特別な操作を必要としません。

型が一つあれば、変わる業務は一つでは済まない

提案書の初稿を速く出す鍵は、AIの使い方ではなく商談メモの型でした。課題・条件・期限・次の一手の4項目でメモを揃え、初稿はAIに、顧客固有の条件と断定表現の確認は人が行う。そして商談メモの型が一つ整うと、訪問報告・フォロー文・週次報告にも同じ入力が使えます。営業部門で最初に手をつける価値が高いのは、この理由からです。

自社の営業フローのどこから始めるか整理したい段階でも、お気軽にご相談ください。