社労士にどう頼むか ── 顧問がいる場合・いない場合、研修会社との役割の分かれ目

「顧問の社労士に聞いたら、助成金はやっていないと言われました」。人材開発支援助成金の相談で、この言葉はかなりの頻度で出ます。次に多いのが「そもそも社労士と契約していません」です。

どちらの場合も、話はそこで止まりません。ただ、誰に何を頼み、誰が何を持っているかが整理されていないと、社労士・研修会社・自社の三者の間で書類が行ったり来たりします。この記事は、その分かれ目を書いたものです。

先に当社の立場を書いておきます。当社は研修会社で、助成金の申請手続きは行いません。手続きは申請事業主本人か、契約した社会保険労務士等の専門家が行うものです。この記事も、制度の要件や可否について述べるものではなく、頼み方の整理です。要件は年度やコース区分で変わり、支給の可否は管轄労働局の審査で決まります。必要に応じて専門家(社会保険労務士等)にご確認ください。

顧問社労士が助成金を扱わないのは、珍しくない

顧問契約があれば助成金も頼める、と思っている方が多いのですが、そうとは限りません。

顧問契約の範囲は、事務所によって違います。給与計算、社会保険の手続き、労務相談が中心で、助成金の申請は別料金か、扱っていないという事務所も、相談の場で聞く限り少なくありません。助成金は年度ごとに要件が変わり、書類の量も多く、専門に扱う事務所とそうでない事務所に分かれているようです。

だから「やっていない」と言われても、関係が悪いわけではないし、顧問を替える話でもありません。聞き方を変えるだけで済むことがあります。

人材開発支援助成金の事業展開等リスキリング支援コースで、計画届と支給申請をお願いしたい。顧問契約の範囲内か、別途の契約になるか、それとも扱っていないか。扱っていない場合、紹介できる事務所はあるか。

この4点を一度に聞きます。「助成金できますか」だけだと、答えも曖昧なままで終わります。コース名を出し、計画届と支給申請という工程名を出すと、事務所の側も範囲を答えやすくなります。

顧問がいる場合に起きる3つの形

顧問社労士がいる会社で実際に起きるのは、だいたい次のどれかです。

顧問が扱う。 いちばん単純です。社内の労務書類は顧問がすでに持っているので、研修会社から出る書類を渡すだけで進みます。この形なら、当社が手順の整理をする必要はほとんどありません。

顧問は扱わないが、紹介してくれる。 助成金を専門にする事務所を紹介される形です。この場合、顧問と紹介先の役割分担を先に決めておかないと、労務書類の出どころが二重になります。出勤簿や賃金台帳は顧問が持っていて、計画届は紹介先が作る。誰がどの書類を出すか、最初の打ち合わせで一覧にしておくと迷いません。

顧問は扱わず、紹介もない。 この場合はスポットで別の事務所に頼むことになります。次の節と同じ進め方です。顧問には「助成金は別の事務所に頼む」と一言伝えておくと、あとで労務書類の提供を頼むときに話が早いです。

顧問がいない場合、スポットで頼む先の探し方

社労士と契約していない会社は、スポット(単発)で助成金だけを頼む形になります。探し方は、いくつかあります。

都道府県の社会保険労務士会が相談窓口を設けていることが多く、地域の事務所を紹介してもらえる場合があります。商工会議所や、同業の経営者からの紹介も現実的です。研修会社が紹介する場合もありますが、そのときは契約前に確かめる5つの質問の3つ目に書いたとおり、社労士と貴社が直接契約する形になっているか、費用がどこに含まれているかを確かめてください。

報酬の相場は、ここでは書きません。事務所によって決め方が違い(着手金と支給決定後の割合を組み合わせる形、時間単位の形など)、金額の幅も大きいためです。聞くべきなのは金額より先に、報酬の決め方と、不支給だった場合の扱いです。ここが書面で決まっていれば、あとで揉めません。

スポットで頼むときに、初回に持って行くもの

初回の相談で「まず確認してきてください」と返されるのを避けるために、次の資料を揃えて行きます。社内で先に答えを出せる項目は社労士に聞く前に社内で答えが出る7つの確認に書いたので、そちらの1枚と一緒に持って行くのが早いです。

持って行くもの出どころ何のために使われるか
雇用保険適用事業所番号・労働保険番号労働保険の年度更新書類申請事業主の特定
受講予定者の一覧(氏名、雇用保険の被保険者か)人事・労務対象者の確認
研修のカリキュラム・日程・見積研修会社計画届の記載と、対象訓練かの確認
研修と事業展開・デジタル化とのつながりの社内説明経営者・担当者コースの趣旨との照合
就業規則・賃金台帳・出勤簿の整備状況人事・労務支給申請時の添付書類の見通し
研修の開始希望日担当者計画届の期限からの逆算

4行目の「事業展開・デジタル化とのつながり」は、このコースで問われる可能性が高い項目ですが、何をどの粒度で書くかは年度と社労士の判断によります。ここは当社では断定できません。研修会社として出せるのは、カリキュラムが業務のどの部分をどう変えるかの説明までです。

研修のカリキュラムが対象訓練の要件に合うかどうかは、カリキュラムを作る前に確かめるで扱っています。社労士に見せる前に、研修会社の側でこの確認を済ませておくと往復が減ります。

研修会社(当社)が出せるもの、出せないもの

役割の分かれ目を、当社を例に書きます。研修会社によって範囲は違うので、他社に頼む場合は同じ表を作って確かめてください。

出せるもの出せないもの
カリキュラム、日程案、見積申請手続きの代行(計画届・支給申請の作成・提出)
届出の期限から逆算した日程支給の可否・金額の判断や保証
公式資料の在り処と、確認する順番の整理助成率・上限額の解釈
受講者ごとの出欠・実訓練時間・課題・修了確認の実施記録社労士の選定と契約(御社が行う)
社労士からのカリキュラムに関する質問への回答就業規則や労務書類の整備
人材開発支援助成金をめぐる三者の役割分担。自社の担当者、社労士、研修会社(当社)がそれぞれ何を持ち、何をするかを3枚のカードで並べた図。研修会社は申請を代行しない
当社が出すのはカリキュラム・日程・見積・記録まで。申請は代行しません。

「出せないもの」の1行目が、この記事でいちばん伝えたいことです。当社は申請を代行しません。研修会社が「申請も全部やります」と言う場合、その中身が何なのかは確かめる必要があります。

「社労士の選定と契約」は、少し補足します。どの事務所に頼むかを決め、契約を結ぶのは御社です。当社が社労士費用を受講料に含めることはありませんし、特定の事務所との契約を研修の条件にすることもありません。

実施記録がどの粒度で残るかは助成金で求められる訓練の記録に書きました。社労士が支給申請で使う材料なので、契約前にこの粒度を社労士にも見せておくと安全です。

三者の連絡は、自社の担当者を経由させる

社労士と研修会社が直接やりとりする形にすると、一見速いのですが、自社の担当者が状況を把握できなくなります。書類が誰の手元にあるか分からない、というのがいちばん困ります。

当社が勧めているのは、自社の担当者を経由させる形です。研修会社からの書類は担当者へ、担当者から社労士へ。社労士からの質問は担当者へ、担当者から研修会社へ。1往復ずつ増えますが、担当者の手元に常に最新の書類が揃います。

例外は、カリキュラムの記載についての細かな質問です。「この科目の時間数は何を根拠にしているか」のような問いは、担当者を挟むと意味が変わることがあります。御社の了解のもとで、当社が社労士に直接回答することはあります。どこまで直接にするかは会社によって違うので、断定はしません。最初の打ち合わせで決めておく事項の1つです。

全体の工程は申請手順(5工程)に、届出の期限から逆算した日程は計画届を開始1か月前から逆算に書いています。

当社の整理が要らない会社

正直に書くと、顧問社労士が助成金に慣れていて、社内に労務担当がいる会社なら、当社が手順の整理をする必要はほぼありません。カリキュラム、日程、見積、実施記録。この4点を出せば、あとは顧問と労務担当で進みます。当社に「助成金の相談」として連絡していただく必要はなく、研修の相談だけで足ります。

当社の整理が役に立つのは、社労士との契約がない、あるいは顧問が助成金を扱わないと分かった段階で、誰に何を頼めばいいかが白紙になっている会社です。そこから社労士を探して初回の相談に行くまでに揃えるものを、一緒に並べるところまでが当社の範囲です。

よくある質問

顧問社労士が助成金を扱ってくれません。顧問を替えるべきですか?

替える必要はないと考えています。助成金を顧問契約の範囲外にしている事務所は少なくなく、扱わないこと自体は珍しくありません。顧問には紹介できる事務所があるかを聞き、なければスポットで別の事務所に頼む形が一般的です。その際、出勤簿や賃金台帳など顧問が持っている労務書類の提供を頼むことになるので、一言伝えておくと後が早いです。

研修会社に申請の手続きを頼めますか?

当社は申請手続きを行いません。計画届や支給申請の作成・提出は、申請事業主本人か、契約した社会保険労務士等の専門家が行うものです。当社がお出しするのは、カリキュラム・日程・見積と、受講者ごとの実施記録、それに公式資料の在り処と確認の順番の整理までです。「申請も全部やります」という研修会社には、その中身を確かめてください。

社労士に初回の相談に行くとき、研修会社の資料は必要ですか?

あると初回から要件の照合に入れます。カリキュラム、日程案、見積の3点があれば、社労士は計画届に何を書くかの見通しを立てられます。研修会社が決まっていない段階でも相談は可能ですが、その場合は「確認事項の一覧」を持ち帰る形になり、往復が1回増えます。7つの確認の1枚と一緒に持って行くと、初回の相談が前に進みます。

頼む相手を決めてから、書類を動かす

顧問がいても、助成金を扱うとは限りません。まず顧問に4点を一度に聞く。扱わなければ紹介かスポット。初回には7つの確認と、研修会社の資料を持って行く。研修会社が出せるのはカリキュラム・日程・見積・記録までで、申請は代行しない。三者の連絡は自社の担当者を経由させる。この順番が決まっていれば、書類は迷子になりません。

誰に何を頼めばいいか白紙の段階でも、お気軽にご相談ください。最新の要件は厚生労働省の公式ページおよび管轄労働局でご確認ください。