助成金の対象になる訓練かを、カリキュラムを作る前に確かめる

研修会社と2回打ち合わせて、カリキュラムができあがった。全12時間、演習たっぷり、社内の期待も高い。そのあとで制度の資料を読み、時間の数え方が違うことに気づく。日程を組み直し、届出の期限に間に合わなくなる。

この順番の失敗を、当社は何度か見ています。内容が悪かったわけではありません。確認する順番が逆だっただけです。

以下は、人材開発支援助成金の検討をしながらAI研修のカリキュラムを作るときに、書き始める前に自社で確かめておく項目を整理したものです。要件そのものの解説はしません。要件は年度・コース区分によって変わりますし、当社は制度の可否を判断する立場にもないからです。

先に3点だけ書いておきます。要件は年度・コース区分によって変わります。最新の要件は厚生労働省の公式資料でご確認ください。そして、支給の可否は管轄労働局の審査により決定されます。この記事にあるのは、その確認を始める前の社内の段取りです。

カリキュラムを先に作り込んだ場合と、先に要件を確認してから書いた場合の順番の違いを左右で対比した図
作り直しの原因は内容の良し悪しではなく、確認の順番であることが多いです。

先に作り込むと、たいてい書き直しになる

カリキュラムづくりは楽しい作業です。どの業務を扱うか、演習にどれくらい時間を割くか、受講者に何を持ち帰ってもらうか。話していると内容が膨らみます。

ここでつまずく方が多いのですが、膨らんだあとで制度側の資料を読むと、たいてい何か所かが合いません。時間の数え方、実施形態の扱い、記載の粒度。ひとつでも合わないと、決めたばかりの日程と見積が動きます。

しかも、書き直しに気づく時期が遅い。届出の期限から逆算すると、カリキュラムの確定はかなり手前に来ます。この逆算は計画届を「開始1か月前」から逆算するに書いたとおりです。

逆に、確認を先に済ませておけば、内容は同じでも書き直しは起きません。確かめるのは次の5つです。

1. 訓練時間に何が入り、何が入らないか

いちばん食い違うのがここです。「10時から17時までだから7時間」と数えてしまうと、たいてい足りなくなります。

一般的な考え方として、訓練時間に含めないものがあります。休憩時間、会場までの移動時間、事務連絡やオリエンテーションの時間、受講者の自己紹介や交流の時間。このあたりは訓練の実施時間とは別に扱われるのが普通です。

つまり、1日の拘束時間から昼休憩と朝夕の事務連絡を引いた時間が、数えられる時間になります。ここを引き忘れると、カリキュラム上は足りているのに実際は足りない、という状態が起きます。

カリキュラムを書く前に、1日の時間割を分単位で紙に書き出してください。

時刻内容訓練時間に入るか
9:50-10:00受付・事務連絡入らない
10:00-12:00講義と演習入る
12:00-13:00昼休憩入らない
13:00-16:50講義と演習(途中10分休憩)休憩分を除いて入る
16:50-17:00連絡・解散入らない

この形で書き出すと、1日あたり何時間を計上できるかがすぐ見えます。あとは必要な時間数まで日数を積むだけです。実際の扱いはコース区分や年度の要件で変わるため、数え方そのものは公式資料と管轄労働局でご確認ください。

積んだ日数を半日×5回にするか、1日×2回にまとめるかは、15〜25時間の研修を、どう日程に割るかで扱っています。回のあいだに業務で試す機会と、1人が抜けたときに消える割合で決める考え方です。

2. 職務に関連する内容だと、どう説明するか

制度で支援の対象になる訓練は、職務に関連するものとされています。ここで問われるのは「AIは役に立つ」という一般論ではなく、自社のどの職務に、どう関連するかです。

説明の形は決まっていませんが、当社の相談では次の3点を1枚にまとめてもらっています。

  • 受講者の職務内容(部署名ではなく、日常的に行っている業務名で書く)
  • 研修で扱う題材(その業務で実際に作っている文書・帳票の名前で書く)
  • 研修後に何ができるようになるか(業務の成果物で書く)

「営業部門の生産性向上」では、職務との関連が読み取れません。「商談メモから提案骨子の初稿を作成できるようにする」なら、職務と題材と到達点が一度に伝わります。

この3点は、テーマを1つに絞る作業とほぼ同じです。手順は30分で研修テーマを1つに絞る手順にまとめています。制度の検討をしていなくても、研修の設計として先にやっておく価値があります。

3. 講師と実施機関の要件は、制度側の資料で確認する

誰が教えるか、どこが実施するかについても、制度側に定めがあります。ここは研修会社に聞くだけでは足りません。

理由は単純で、研修会社は自社が要件に合うかどうかを最終的に判断できないからです。判断するのは管轄労働局です。ですから、確認の順番はこうなります。

  1. 制度側の資料(厚生労働省のパンフレットや支給要領)で、実施機関・講師に関する記載を読む
  2. その記載に照らして必要な情報を、研修会社に具体的に聞く
  3. 判断に迷う点は、管轄労働局または社労士に確認する

研修会社に聞くときは、「助成金は使えますか」ではなく「御社の法人形態と、講師の実務経験が分かる資料をいただけますか」のように、資料を求める形にすると話が早いです。当社の場合も、こうしたご依頼には資料でお答えしています。可否そのものは、当社では判断しません。

4. eラーニングと集合研修で、扱いが違うことがある

同じ内容でも、実施形態によって扱いが変わる場合があります。集合研修、オンラインのライブ型、録画のeラーニング。この3つは、制度の上で同じ扱いとは限りません。

たとえば時間の数え方ひとつ取っても、講師が同時に進行するライブ型と、受講者が好きな時間に視聴する形式では、記録の残り方が違います。記録の残り方が違えば、必要な書類も変わります。

ですから、「集合研修とeラーニングを組み合わせて12時間」という設計をする場合は、組み合わせた時点で扱いがどうなるかを先に確認してください。ここを後回しにすると、片方だけ計上できないといった事態になり、時間数の積み直しが必要になります。

なお当社の研修はライブ型で、録画の配信は行っていません。形式を混ぜないことで、記録の粒度をそろえやすくしているという事情もあります。

5. カリキュラムに書く内容の粒度

最後が、いちばん直しが多い項目です。

「AI研修 12時間」と書いたカリキュラムは、まず通りません。何を、どの順番で、何時間やるのか。そこまで書きます。目安としては、1コマ(60分〜120分)ごとに、扱う内容と実施方法が読み取れる粒度です。

粗い書き方と、そうでない書き方を並べます。

粗い書き方書き直した例
AIの基礎 2時間生成AIの仕組みと限界、社内で入力してよい情報の範囲(講義90分・確認演習30分)
実践演習 4時間商談メモから提案骨子の初稿を作る演習。型の作成と相互講評(演習210分・講評30分)
質疑応答 1時間自部署の業務への適用検討と、講師による個別の質疑(演習40分・質疑20分)

右の書き方にしておくと、職務との関連も同時に説明できます。2つめの確認項目と、この粒度の話はつながっています。

ここまで書ければ、カリキュラムは研修会社との打ち合わせ資料としても使えます。二度手間になりません。

確認してから書く、という順番

5つを並べ直すと、カリキュラムを書き始める前の作業はこうなります。

  1. 1日の時間割を分単位で書き出し、計上できる時間を確かめる
  2. 受講者の職務・題材・到達点を1枚に書く
  3. 制度側の資料で実施機関・講師の記載を読み、研修会社に資料を求める
  4. 実施形態を1つに決める(混ぜるなら扱いを先に確認する)
  5. そのうえで、1コマ単位の粒度でカリキュラムを書く

1から4までで、だいたい半日から1日です。ここを飛ばして5から始めると、冒頭に書いた書き直しが起きます。

社内の体制側の確認(雇用保険や就業規則など)は、この記事とは別の話です。そちらは社労士に聞く前の7つの社内確認に整理してあります。訓練内容の確認と、社内体制の確認は、並行して進めて構いません。

当社が配布している助成金活用ガイドにも、公式資料の在り処と確認の順番を載せています。

よくある質問

カリキュラムは研修会社が作ってくれるのではないですか?

原案は研修会社が作れますが、訓練時間の数え方や職務との関連の説明は、受講者の実際の業務を知っている自社側でないと書けません。当社の場合も、業務と到達点をヒアリングしたうえで原案をお出しし、記載の最終確認はお客様側で行っていただく形をとっています。制度の要件に合うかどうかの判断は、管轄労働局の審査によります。

訓練時間に休憩が入らないのは、どのコースでも同じですか?

要件は年度・コース区分によって変わるため、一律とは言えません。この記事に書いたのは一般的な考え方で、実際の扱いは厚生労働省の公式資料と管轄労働局でご確認ください。確認の時期は、検討を始めたときと、計画届を出す直前の二回にしておくと安全です。

カリキュラムを作ってから要件を確認しても、間に合いませんか?

間に合う場合もありますが、日程を組み直すことになると届出の期限に影響します。時間数が足りないと分かってから日数を足すと、受講者の予定調整からやり直しになるためです。確認を先にしておけば、同じ内容でも書き直しは起きません。

順番を変えるだけで、作り直しは減る

この記事で挙げた5つは、どれも制度の解釈を必要としません。時間割を書き出す、職務と題材を書く、資料を読む、形式を決める、粒度を上げる。社内でできる作業ばかりです。

それでも順番を間違えると、数週間分の調整が無駄になります。逆に言えば、半日の確認で数週間を守れます。

あらためて書いておきます。要件は年度・コース区分によって変わります。最新の要件は厚生労働省の公式ページでご確認ください。支給の可否は管轄労働局の審査により決定されます。判断に迷う点は、必要に応じて社労士など専門家にご確認ください。

当社は制度の可否を判断しませんが、公式資料の在り処の案内、1コマ単位のカリキュラム原案、実施後に要件照合へ使える粒度の記録の引き渡しまでは対応しています。カリキュラムを書き始める前の段階でも、ご相談いただけます。