社労士に聞く前に、社内で答えが出る7つの確認 ── AI研修で人材開発支援助成金を検討するとき

人材開発支援助成金の相談を社労士に持ち込むと、最初に聞かれることはだいたい決まっています。雇用保険の適用事業所ですか。受講者は被保険者ですか。労働保険料は納めていますか。

どれも、社内で調べれば答えが出る質問です。ここを空欄のまま相談に行くと、社労士の側は「まず確認してきてください」と返すしかなく、往復が1回増えます。逆に、答えを持って行けば、初回から要件の照合に入れます。

以下は、当社が配布している「助成金活用ガイド」のチェックリストをもとに、社内で先に答えを出しておける項目を7つに絞ったものです。制度の要件そのものは改定されるため、ここに書いているのは要件ではなく「社内のどこを見れば分かるか」です。可否の判断はしていません。

1. 雇用保険の適用事業所か

この制度は、雇用保険適用事業所の事業主が対象です。ほとんどの法人は該当しますが、設立直後や、従業員がいない時期がある会社では確認が必要です。

見る場所:労働保険の年度更新の書類、または顧問社労士。手元に何もなければ、管轄のハローワークで確認できます。

2. 受講予定者が雇用保険の被保険者か

役員だけを受講者にする研修は対象になりません。研修を受けさせたい人が、雇用保険の被保険者かどうかを一人ずつ確認します。

見る場所:雇用保険被保険者資格取得等確認通知書。人事・労務の担当者なら把握しているはずです。「役員だけれど実務もしている」という方は、被保険者かどうかで扱いが変わるので、ここで確かめておきます。

3. 労働保険料の納付と、直近の法令違反

労働保険料の未納や、直近1年の労働関係法令違反は、不支給の要件にあたります。未納がある場合は、納付後にあらためて検討できます。

見る場所:経理・労務の担当者、または顧問社労士。これは聞きにくい項目ですが、あとで分かるより先に分かるほうがずっと良い、というのが当社の実感です。

4. 対象外の業種に該当しないか

性風俗関連営業や接待を伴う飲食等の営業(受託営業を含む)は、この制度の対象外とされています。該当し得るか判断に迷う場合は、管轄労働局に確認します。

5. 研修費を先に全額支払えるか

研修費は、制度の利用有無にかかわらず先に発生します。訓練経費を事業主が全額負担していることが支給の前提で、助成され得る金額は審査のあとで入金される順序です。

つまり、資金計画は「研修費を全額払う」前提で立てる必要があります。支給を前提にした後払いや、支給されなかった場合の返金条件を研修会社と取り決めることは、制度の趣旨に反します。当社もそうした条件は設けていません。

見る場所:経理・財務の担当者と、支払時期を含めて確認します。支給を前提とした支払条件を持ちかけられたときの見方は、契約前に確かめる5つの質問にあります。

6. 受講者が実訓練時間の8割以上出席できるか

出席が実訓練時間の8割を下回ると、その受講者は助成の対象になりません。これは制度の話であると同時に、日程の話でもあります。

繁忙期に研修を置いていないか。受講予定者の業務量は、研修期間中に確保できるか。決算期の経理部門に20時間の研修を入れると、ここで困ります。

見る場所:受講予定者の直近のカレンダーと、部門の繁忙期。日程を期限から逆算する手順は、計画届を「開始1か月前」から逆算するで説明しています。

7. 就業規則・賃金台帳・出勤簿が整っているか

支給申請の際には、受講者の出勤簿や賃金台帳など、社内の労務書類の提出が想定されます。研修そのものとは関係のない書類ですが、ここが整っていないと申請の段階で止まります。

見る場所:人事・労務の担当者。過去に人材開発関連の助成金を使ったことがあれば、整備済みの場合があります。

持って行く1枚の書式

書式は何でも構いませんが、当社の相談で使っている形を載せておきます。列は3つだけです。

確認項目社内の答え見た場所・確認した人
1. 雇用保険の適用事業所該当する労働保険の年度更新書類(○年度)
2. 受講予定者の被保険者資格8名中8名が該当資格取得等確認通知書、人事
3. 労働保険料の納付・法令違反未納なし。違反なし経理、顧問社労士
4. 対象外業種への該当該当しない──
5. 研修費の先払い可能。支払時期は契約時に確認財務
6. 8割以上の出席12月は繁忙期のため1月開始を検討営業部長
7. 就業規則・賃金台帳・出勤簿整備済み。前回の助成金利用時に確認人事

記入内容は想定例です。「見た場所・確認した人」の列があるのは、社労士から「それはいつの書類ですか」と聞かれたときに答えられるようにするためです。ここが空欄だと、結局もう一度確認に戻ります。

7つに答えられたら、社労士に持って行く

上の7項目に答えを書いた紙を1枚持って行けば、社労士との初回の相談は要件の照合から始められます。答えが「分からない」の項目があっても構いません。「分からない」と分かっていること自体が、相談の論点になります。

余談ですが、この7項目のうち5と6は、制度の要件というより社内の段取りの話です。制度を使わない場合でも、研修の予算と日程を決めるときに同じことを確認します。制度の検討を、研修の設計を見直す機会と考えると、少し気が楽になるかもしれません。

当社の役割

当社は研修会社であり、制度の可否を判断する立場にはありません。申請の手続きも行いません。当社がご一緒できるのは、公式資料の在り処と確認すべき論点の整理、届出の期限に合わせた日程・見積の提示、そして実施後に要件照合に使える粒度の記録を残すことです。

最新の要件は厚生労働省の公式ページおよび管轄労働局でご確認ください。

よくある質問

7項目すべて確認できないと相談できませんか?

いいえ。分からない項目は「分からない」のまま持って行って構いません。何が分かっていて何が分かっていないかが整理されていれば、社労士との相談は前に進みます。

社労士との契約はまだありません。先に研修会社に相談してもよいですか?

構いません。当社は制度の可否を断定しませんが、公式資料の在り処と確認の順番、届出の期限から逆算した日程案はお出しできます。社労士への相談が必要になった段階で、その旨をお伝えします。

要件は毎年変わると聞きました。この記事の内容は最新ですか?

この記事は制度の要件ではなく、社内のどこを見れば分かるかを整理したものです。要件そのものは厚生労働省の公式資料で、検討開始時と届出直前の二回、版と基準日を確認してください。