ChatGPT・Gemini・Claude・Copilot、会社で最初に入れるのはどれか ── 既に使っているものと、情報の扱いで決める
「ChatGPTとGeminiとClaudeとCopilot、どれがいいですか」。研修を検討する段階で、テーマと受講者が決まったあとによく出る質問です。この記事では、この質問に製品名では答えません。機能で選ぶと、半年後に運用の側で困るケースが多いからです。
この記事で書くのは、4つの製品の比較表ではありません。どの製品を検討するにしても、先に通しておく3つの問いです。社内がMicrosoft 365とGoogle Workspaceのどちらで動いているか。入力したデータがモデルの学習に使われない設定を、会社として確認できるか。管理者がアカウントを配って、退職のときに止められるか。この3つを通すと、候補はたいてい1つか2つに絞れます。
各製品の価格、プランの名前、使える機能は、書いた翌月に変わります。この記事では断定せず、「契約前に公式サイトで確認する」と書く箇所を残しています。そこは御社の情報システム担当か、ツールのベンダーに確認してください。
機能比較の表で選ぶと、半年後に困る理由
架空の想定例です。従業員40名の卸売業。情報システム担当が1人で、4製品の比較表を作りました。縦に製品、横に「文章の精度」「表の読み込み」「画像の生成」「価格」。表の上で一番点数の高かった製品を全社に入れ、半年後に困りました。
困ったのは機能ではありません。退職した営業担当のアカウントを止める手段がなく、本人が個人で登録したアカウントだったと後から分かったこと。社内ルールに「入力データは学習に使われない設定にしている」と書いてあるのに、誰がいつ確認したか記録がなかったこと。会社のファイルはGoogle Driveにあるのに、AIツールは別のアカウントで動いていて、毎回ファイルを手で持ち運んでいたこと。比較表の列に、どれも入っていませんでした。
業務で使うレベルの文章の精度は、4製品の間で日々入れ替わります。どの製品でも、提案書の骨子や議事録の要点整理は十分にこなします。差がつくのは運用の側です。だから比較表ではなく、3つの問いで決めます。
問い1:社内はMicrosoft 365か、Google Workspaceか
最初の問いは、製品の話ではなく、御社の今の環境の話です。
メールとファイルの置き場所がMicrosoft 365で動いている会社なら、Copilotを軸に検討するのが自然です。Google Workspaceで動いている会社なら、Geminiを軸に検討します。理由は機能ではなく、アカウントが既存の管理に乗るからです。社員のアカウントを情報システム担当がすでに発行・停止している基盤に、AIツールのライセンスを足す形になるので、入退社の手続きを新しく作らずに済みます。会議のファイルや受信したメールを、別のツールに貼り直さずに扱える点も、研修後に使われ続けるかどうかに効きます。
どちらも使っていない会社、たとえばメールだけ別のサービスで、ファイルは社内サーバーという会社なら、ChatGPTかClaudeの法人向けプランを単体で検討する形になります。この場合は、アカウントの発行と停止を自社で新しく手順化することが前提です。
既にMicrosoft 365やGoogle Workspaceを使っていても、ChatGPTやClaudeを単体で選ぶ判断はあり得ます。社内で既に多くの人が使っている、ある業務でどうしても使いたい機能がある、という場合です。その場合も、問い2と問い3は同じように通します。
CopilotやGeminiがどのプランに含まれ、どこまで組み込まれるかは、契約のプランによって違い、頻繁に変わります。ここは断定できないので、契約前に公式サイトで確認してください。
問い2:入力データが学習に使われない設定を、会社として確認できるか
社内でいちばん気にされやすいのがここです。
多くの製品に、法人向けのプランがあります。名前は製品ごとに違いますが、入力したデータをモデルの学習に使わないことが既定になっている、とされているものが多いです。一方、無料版や個人向けプランでは、設定の有無も、その設定を本人がオンにしたかどうかも、会社からは確認のしようがありません。
決めてほしいのは、どの製品の設定が良いかではなく、「会社として確認できる形になっているか」です。法人プランを契約し、データの取り扱いのページを情報システム担当が読み、確認した人・日付・ページの名前を社内ルールのただし書きに1行残す。この形になっていれば、半年後にプランや設定画面が変わっても、確認し直す起点があります。
社内ルールのどこに書くかは、第3条と第8条だけ先に決めるで扱っています。入力してはいけない情報の線引きと、相談窓口の2つを先に決める構成なので、ツールの名前と確認の記録はそこに入ります。
ここも、各製品の既定値はプランと時期で変わります。「法人プランなら大丈夫」と社内に広めず、契約前に公式サイトのデータの取り扱いに関する記載を読んでください。必要に応じて専門家にご確認ください。
問い3:管理者がアカウントを配って、止められるか
3つ目は、決めていない会社がいちばん多い問いです。
法人プランには、管理者がアカウントを発行し、停止し、利用状況を見られる管理画面があるのが一般的です。これがあると、退職の手続きの一覧に「AIツールのアカウント停止」の1行を足すだけで済みます。メールアカウントの停止と同じ扱いになります。
問い1で既存の基盤に乗せる判断をしていれば、ここはほぼ自動的に通ります。Microsoft 365やGoogle Workspaceのアカウントを止めれば、紐づくAIツールも止まる形になるからです。単体で契約する場合は、管理画面があるか、席数の増減がいつでもできるか、退職者の履歴や指示文を会社側で取り出せるかを、契約前に1つずつ確認します。
個人の無料版で始めた場合、このアカウントは本人と一緒に出ていきます。会社は削除を依頼できても、確認する手段がありません。
無料版のまま始めると、研修の初日に起きること
「まずは無料版で様子を見て、良ければ法人プランに」という進め方は、筋が通っているように見えます。ただ、研修を無料版のままで受けると、初日の最初の30分で画面が4種類に分かれます。会社契約の人、個人で有料契約している人、個人の無料版の人、持っていない人。演習の最初の課題で何人かに利用上限の表示が出て、出てくるものも揃いません。
ここで起きることと、決めておく4点は無料版のまま受けると起きることに書きました。この記事の3つの問いは、その4点のうち「契約の主体」を決めるための手順にあたります。
無料版で様子を見る期間を置くこと自体は構いません。その場合も、様子を見る人の範囲と期間、見終わったら誰が法人プランの判断をするかを先に決めておくと、「様子見」が1年続く状態を避けられます。
研修の前に、1つに揃える理由
3つの問いを通すと、候補が2つ残ることがあります。Google Workspaceの会社で、営業部の何人かが既にChatGPTを使っている、という場合です。ここで「両方入れる」を選ぶ会社がありますが、研修の前は1つに揃えることをおすすめしています。
理由は3つあります。研修の演習で、講師の説明が1通りで済むこと。研修で作った指示文の型が、1つの製品を前提に書けるので、部署で共有したときにそのまま使えること。社内ルールの対象サービス名が1つになり、確認の記録も1行で済むこと。
研修のテーマを決めるとき、ツールが決まっていないと「この業務にはこの製品のほうが」という話が混ざって、テーマが絞れなくなります。30分の打ち合わせで研修テーマを1つに絞る手順では、業務の棚卸しから始めてテーマを1つにする手順を書いています。ツールを1つに決めておくと、この打ち合わせが業務の話だけで進みます。
2つ目の製品が必要になるのは、たいてい研修のあとです。開発部門だけ別の製品が要る、ある業務で特定の機能が欠かせない、と分かった時点で、2つ目を足せばよい。最初から2つ入れるより、1つで業務の型を作ってから増やすほうが、管理も研修も軽くなります。
契約前に、公式サイトで確認する項目
3つの問いを通して製品を決めたら、契約の前に次を公式サイトで確認します。この記事では断定しませんし、内容も時期によって古くなります。
- 法人プランの名前と、席数の下限(何人からか)
- 月契約か年契約か、席の増減がいつでもできるか
- 入力データがモデルの学習に使われない設定が既定か、管理者が固定できるか
- 管理者がアカウントの発行・停止・利用状況の確認をできるか
- 退職者の履歴や作った指示文を、管理者が取り出せるか
- データの保存先と保存期間
- 既存のMicrosoft 365やGoogle Workspaceとの連携に、追加の契約が要るか
この一覧を情報システム担当に渡して、回答を1枚にまとめてもらいます。その1枚が、社内ルールのただし書きと、研修前の受講者への案内の元になります。
よくある質問
4つのうち、結局どれが一番性能が高いのですか?
この記事では順位をつけません。業務で使うレベルの文章の要約や骨子づくりでは、どの製品も十分にこなし、細かな精度の順位は数か月で入れ替わります。差がつくのは、既存の基盤に乗るか、学習利用の設定を会社として確認できるか、管理者が配布・停止できるかの運用の側です。性能の比較表を作る時間があるなら、この3つの確認に使うほうが、半年後の困りごとが減ります。
会社はGoogle Workspaceですが、社員の多くが個人でChatGPTを使っています。どうすべきですか?
断定はできませんが、まず3つの問いを両方の製品に通してみてください。Geminiは既存の管理に乗る点で問い1と問い3が通りやすく、ChatGPTは使い慣れている人が多い点で研修後の定着に有利です。どちらを選んでも、研修の前は1つに揃え、個人アカウントでの業務利用を認めるかどうかを社内ルールに書くことを想定しています。2つ目が必要かどうかは、研修のあとに判断する形で間に合います。
AI SkillPathにツールの選定や契約をお願いできますか?
契約、アカウントの発行、学習利用の設定変更といった作業そのものは、御社の情報システム担当かツールのベンダーの担当領域です。AI SkillPathは研修のあとのAI検証(PoC)や導入まで伴走しますが、製品の選定や契約にどこまで関われるかは、初回相談(無料)で確認してください。この記事の3つの問いをどう通すか、研修の前に何を決めておくかの整理も、初回相談でご相談いただけます。
「どれが良いか」ではなく、「どれなら管理できるか」
ツールを選ぶ質問は、「どれが良いか」の形で来ます。でも半年後に効くのは、「どれなら御社で管理できるか」です。既存の基盤に乗るか。学習に使われない設定を、会社として確認して記録できるか。退職のときに管理者が止められるか。この3つを通して1つに揃え、価格と機能は契約前に公式サイトで確かめる。製品名は、その結果として決まります。
3つの問いのどこで止まっているか整理したい段階でも、ご相談いただけます。ただし契約と設定そのものは、情報システム担当かベンダーの担当領域です。