オンラインか対面か併用か ── 研修の形式で変わること、変わらないこと

「やっぱり対面のほうが、身につきますよね」。研修の形式を相談されるとき、この一言が先に来ることが多いです。そのあとに「ただ、営業所が3つに分かれていて」と続きます。

当社はオンライン・対面・併用の3形式で研修を実施していて、定価はどの形式でも同じです。どれを勧めても当社の売上は変わりません。その立場から正直に書くと、形式で研修の出来が決まる場面は、思われているより少ないと考えています。決めているのは、演習で何の業務を扱うかと、誰が受けるかです。

それでも、形式で確かに変わることはあります。演習中の手元が講師から見えるか。紙の書類を持ち込めるか。拠点の離れた人をどう混ぜるか。講師の交通費が乗るか。この記事は、その「変わること」だけを扱います。登場する会社や人数は架空の想定例で、実際の顧客事例ではありません。

集中力の差は、形式より1回の長さで決まる

「オンラインだと集中が続かない」。半分は当たっていて、半分は形式のせいではありません。

当社の研修は、1回3〜5時間を週1回など複数回に分けて実施するのが標準です。5時間を休憩なしで続ければ、オンラインでも対面でも、後半の演習は止まります。逆に、90分ごとに区切って、区切りのたびに各自の業務で1つ試す時間を挟めば、オンラインでも持ちます。

差が出るのは、集中力そのものより、講師の側から受講者の手元が見えるかどうかです。ここは形式で本当に変わります。

形式で変わるのは、演習中の「手元の見え方」

対面では、講師が机の間を歩けます。手が止まっている人、指示文を3回書き直している人、隣の画面をのぞいている人。声をかけるかどうかを、歩きながら決められます。

オンラインでは、それができません。画面共有は1人ずつで、全員の手元を同時には見られません。手が止まっていても、本人が言わなければ分からない。

だから、オンラインの演習は運び方が変わります。演習を20分で区切り、区切りごとに2〜3人に画面を共有してもらう。途中経過をチャットに貼ってもらう。質問は口頭でもチャットでもよいと最初に言っておく。地味ですが、効きます。

この運び方ができる研修会社かどうかは、形式を選ぶ前に確かめておく価値があります。録画を流して質問だけ受ける形式は、当社の言うライブ型・同時双方向とは別のものです。

オンライン・対面・併用の3形式で変わること。手元の見え方、向く業務、費用と手間、注意点を形式ごとに並べた図
定価は3形式とも同じです。変わるのは、手元の見え方と、紙の持ち込みと、交通費です。

オンラインで差が出にくい業務

材料が最初からパソコンの中にある業務は、オンラインで差が出にくいことが多いです。

メールの返信文、議事録、月次の報告書、Excelの集計、提案書の下書き。受講者は自席で、普段使っているパソコンと社内システムのまま演習できます。成果物はファイルで共有でき、講師の講評も画面上で済みます。

むしろ、自席のほうが都合がいい面もあります。対面の会場に持ち込むパソコンが普段と違うと、「いつものフォルダが開けない」で演習の10分が消えます。オンラインなら、その心配がありません。

経理・営業・総務・人事といった事務部門の研修は、当社では大半がこの型に入ると見ています。ここは会社によって違うので断定はしませんが、事務部門で「対面でないと困る」理由を聞くと、業務の性質ではなく、後述する初回の顔合わせや受講者の慣れの話であることが多いです。

対面のほうが収まりがいい場面

逆に、次のような場面は対面のほうが収まりがいいと考えています。

紙が中心の職場。 製造現場や店舗では、手順書はラミネートされて壁にあり、日報は紙です。演習の材料をその場で見せ合えるかどうかで、話の具体性が変わります。製造・現場部門で生成AIを使うで書いた「文字が残っている仕事」を探す作業は、机の上に実物があるほうが早い。

初回。 受講者が複数部署にまたがり、お互いをよく知らないとき。初回だけ対面で、2回目以降をオンラインにする組み方は、併用の中でいちばん自然な形です。1回でも顔を合わせていると、オンラインでの発言のしやすさがかなり違います。

パソコンの操作に慣れていない受講者が多いとき。 画面共有やチャットの操作そのものでつまずくと、演習の内容に入る前に時間が消えます。対面なら隣で手を出せます。

上長が同席する回。 研修後に手順を変える承認を、その場で取りたい回です。オンラインでも可能ですが、同じ部屋にいるほうが「では、それでやってみよう」が出やすい。

どれも「対面でなければ不可能」ではありません。手間と結果を比べたときに、対面のほうが割に合う、という程度の話です。

拠点が複数あるとき ── 併用は、いちばん難しい

架空の想定例です。本社が大阪、営業所が名古屋と広島。営業部の10名で実践コースを受けたい。本社に6名、営業所に2名ずつ。

選択肢は3つです。全員オンライン。全員を本社に集めて対面。本社は対面、営業所はオンラインで併用。

相談の場で多く選ばれるのは3つ目の併用で、そして運営がいちばん難しいのも併用です。会場側のやりとりがマイクに乗らない。会場で笑いが起きて、オンライン側だけ理由が分からない。演習中、講師は会場の机を回るので、オンラインの2名は放置される。気がつくと、営業所の4名が「傍聴」になっています。

正直に書くと、当社は併用を先に勧めることはあまりありません。本社に集まれるなら対面、集まれないなら全員オンライン。この順で提案することが多いです。全員が同じ条件のほうが、演習の進み方がそろいます。

それでも併用を選ぶなら、次の約束が要ります。会場側も1人1台のパソコンとヘッドセットを用意し、発言は全員マイク経由にする。講師は演習中、会場とオンラインを交互に見る時間を決めておく。会場側に、オンライン側の様子を見る進行役を1人置く。ここまでやれば、傍聴にはなりにくくなります。

費用と手間 ── 対面は講師の交通費が実費

コースの定価は形式にかかわらず同じで、対面の場合のみ講師の交通費を実費でいただいています。費用の見方そのものはAI研修の費用相場と料金の見方に書きました。

当社の拠点は大阪・梅田です。大阪府内や近隣の府県なら、交通費は大きな額になりません。遠方だと話が変わります。全5回の研修なら5往復分で、宿泊が要る距離ならそれも乗ります。

ここは当社に不利な話ですが、遠方の会社で、扱う業務が事務部門の文書系なら、対面を当社に頼まなくてよいと思います。オンラインで差が出にくい業務に交通費を足しても、研修の中身は変わりません。対面にこだわるなら、近くの研修会社を探すほうが収まりがいい場合もあります。

手間の面では、対面は会場、プロジェクター、受講者のパソコン、Wi-Fiの確保が自社側の仕事です。オンラインは各自の環境と、カメラ・マイクの動作確認。オンラインの場合は会議ツールの参加ログを残す運用も先に決めておきます。出席の確認方法は助成金で求められる訓練の記録のオンラインの節に書いたとおりです。

形式は、最後に決めて構いません

形式の相談で、最初に形式の話をすることは、あまりありません。先に聞くのは、どの業務を扱うかと、誰が受けるかです。AI研修に誰を出すかで書いたとおり、受講者が同じ部署にまとまっているか、拠点が分かれているかで、選べる形式が絞られます。

業務と人が決まれば、形式はたいてい1つに絞れます。事務部門で1拠点ならオンライン。現場部門で1拠点なら対面。拠点が分かれていれば、まず全員オンラインを検討し、初回だけ対面にできないかを考える。この順で決めています。

よくある質問

オンラインと対面で、研修の内容は変わりますか?

カリキュラムと演習の内容は変えていません。変わるのは演習の運び方で、オンラインでは演習を短く区切り、区切りごとに数名に画面を共有してもらう形をとります。対面では講師が机を回って手元を見ます。どちらもライブ型・同時双方向で、録画を視聴する形式ではありません。手元に残るテンプレートや実施記録も、形式による違いはありません。

併用にすると、会場側とオンライン側で不公平になりませんか?

差は出やすいと考えています。会場側の会話がマイクに乗らず、オンライン側が傍聴になるのが典型です。避けるには、会場側も1人1台のパソコンとヘッドセットで参加し、発言を全員マイク経由にする約束が要ります。それが難しければ、全員オンラインにそろえるほうが、演習の進み方が均一になります。当社は集まれるなら対面、集まれないなら全員オンラインを先に提案しています。

大阪府外の会社でも、対面で実施できますか?

京都・兵庫・奈良など近隣の府県は、対面でもご相談いただけます。講師の交通費は実費でのご負担になります。遠方の場合は、往復の交通費が回数分かかるため、オンラインまたは初回だけ対面にする併用をおすすめすることがあります。扱う業務が事務部門の文書系であれば、オンラインで差が出にくいことが多く、交通費を足しても研修の中身は変わりません。

変わるのは3つだけ

手元の見え方、紙の持ち込み、交通費。形式で変わるのは、突き詰めるとこの3つです。集中力は形式より1回の長さで決まり、研修の出来は業務と人選で決まります。事務部門で1拠点ならオンライン、現場で1拠点なら対面、拠点が分かれていればまず全員オンライン。併用は最後の選択肢です。

拠点が分かれていて形式を決めかねている段階でも、お気軽にご相談ください。